不動産業に携わっていると、時折聞かれるのが「この物件って事故物件じゃないですか?」という質問です。テレビ番組や動画サイトなどの影響もあり、「事故物件」という言葉が一般的になってきた印象がありますが、その実態や定義については、あまり明確に知られていないことも多いようです。
本稿では、あくまで不動産屋の現場目線から、「事故物件」や「心理的瑕疵(かし)」について、断定は避けつつも、なるべく分かりやすくお伝えしてみたいと思います。
「事故物件」とは何か?
まず、「事故物件」とは法律用語ではありません。一般には、人が死亡した物件——特に、事件・事故・自殺・孤独死などの“通常と異なる形”で亡くなられたケースがあった不動産を指して使われることが多いです。
ただし、これには明確な定義があるわけではなく、「何をもって事故物件とするか」は非常に主観的な面を含みます。たとえば、病院で亡くなった場合は多くの人が気にしないかもしれませんが、部屋の中で孤独死があったと聞くと、途端に「それは事故物件では?」と感じる人もいます。
つまり、どこまでが“普通”で、どこからが“心理的に問題がある”と判断されるのか。その線引きは、法律や業界ガイドラインに一定の基準はあるものの、最終的には借主や買主の「受け止め方」によるところが大きいのが実情です。
心理的瑕疵とは
不動産取引における「瑕疵」とは、本来備わっているべき機能や状態に欠陥があることを指します。これには物理的瑕疵(雨漏り、シロアリ被害など)、法的瑕疵(建築基準法違反など)などがあり、心理的瑕疵もその一種です。
心理的瑕疵とは、物理的には何の問題もないが、過去の出来事や噂などにより、借主や買主が心理的抵抗を感じるような事情を指します。たとえば、過去に殺人事件があった、近隣に反社会的勢力がいた、あるいは自殺があったといったケースです。
この心理的瑕疵の取り扱いが不動産取引では非常に繊細です。物理的に不具合がない以上、目に見えない分、説明義務がどこまであるのか、また説明しなかった場合の責任の所在がどこにあるのかという点で、現場ではよく議論になります。
告知義務について
2021年、国土交通省が「心理的瑕疵に関するガイドライン」を発表しました。このガイドラインでは、自殺や事件などがあった物件について、一定期間は借主・買主に説明することが望ましいとされています。
ただし、この「一定期間」にも明確な年数の定義があるわけではなく、例えば「おおむね3年程度」とされることが多いですが、地域性や市場状況、建物の管理状態などによっても判断が分かれる可能性があります。
また、亡くなられた方の死因によっても対応は変わってきます。老衰や病死の場合、告知義務は基本的にないとされることが多いですが、孤独死で発見が遅れた場合は、心理的抵抗があると見なされ、告知が必要になるケースもあります。
結局のところ、「告知義務があるかどうか」ではなく、「相手がどう受け取るか」に敏感であるべき、というのが現場の感覚です。
見分け方についての現場感覚
ここまで読むと、「結局、事故物件かどうかは教えてもらえるの? 自分で見抜くしかないの?」という疑問が出てくるかもしれません。正直に言えば、現場の人間でも初見では分からないことが多いです。
ですが、あくまで参考程度に、以下のようなポイントに注意を向けると「何か事情があったかもしれない物件」に気づくヒントになるかもしれません。
1. 異常に安い賃料や売買価格
近隣の類似物件と比べて著しく安い場合、何かしら理由があるかもしれません。もちろん、単純に早く入居者を決めたいだけのケースもありますが、事故物件である可能性もゼロとは言えません。
2. 募集条件の変遷を確認する
以前からチェックしていた物件が、途中で「新築」→「リフォーム済」に切り替わった、あるいは「ファミリー向け」から「単身者向け」へ変更された、などの変化があった場合、何かがあった可能性も考えられます。あくまで「兆し」としての話ですが。
3. 不自然な間取りの変更
リビングだったはずの場所が急に仕切られて個室になっていたり、収納スペースが極端に広くなっていたりする場合、建物内部に手が加えられた理由を推測してみると、何か見えてくることもあります。
4. 過去の募集履歴を検索する
インターネットには過去の不動産募集情報を掲載しているアーカイブサイトもあります。そういったサイトで物件名や住所を調べてみると、以前の募集内容や、そこに記載されていた注意書きから、何か読み取れる場合もあります。
不動産屋に聞いてみるのが一番早い
やはり、最も現実的な手段は「不動産屋に聞く」ことです。もちろん、すべてを正直に話してもらえるかどうかは、対応する営業担当者や店舗方針にもよるのですが、「心理的な事情に敏感な方なので、何かあれば事前に教えていただけますか?」と伝えるだけでも、空気感が変わることがあります。
逆に、「そのあたり、気にしないんで大丈夫です」と言ってしまうと、相手も「じゃあ話さなくてもいいか」と判断する可能性があります。
重要なのは、「気にするかどうかは別として、知っておきたい」というスタンスを見せること。そうすれば、少なくとも伝えられるべき情報は受け取れる確率が高くなります。
最後に:事故物件はダメな物件なのか?
結論から言えば、「事故物件=住んではいけない物件」ではありません。むしろ、価格が安く、設備も整っていて、住み心地が良い場合もあります。過去の事情を受け入れられるのであれば、非常にコストパフォーマンスが高い選択肢となるケースもあるでしょう。
また、時が経てば心理的瑕疵の重みも薄れていくものです。数年後には誰も気にしなくなっていた、という例も多くあります。
結局のところ、大事なのは「自分がどう感じるか」「何を大事にして暮らすか」ということ。不動産屋としても、あくまでお客様の感覚に寄り添いながら、必要な情報をきちんと伝えることが責任だと考えています。
物件選びは「縁」も大きいもの。情報をきちんと集め、自分なりの判断軸を持つことで、納得のいく住まい選びができることを願っています。
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